セクション3: 旅行先とホテル

2020年代の旅行者を待ち受けるエキサイティングで興味深い旅行体験

セクション3では、トム(ミレニアム時代の旅行者)が選択可能な多くの新しいエキサイティングな旅行先、旅行先での体験、そして滞在場所について見ていきます。

ホテルに滞在しているトム

未来のホテル客室

ホテルに関するテクノロジーの発展にとって、10年は長い期間です。今後10年間で現在のホテルの客室が、快適さやデジタルの利便性の面で劇的に変化することになるでしょう。

スカイスキャナーのニック・グプタホテル部門長は、これからのホテルの形態について次のように述べています。「デジタルテクノロジーの進化によって10年以内に、旅行者は選んだホテルに足を踏み入れてから客室をチェックアウトするまで、誰一人とも会う必要がなくなるでしょう」と彼は語ります。

「ピアツーピア(P2P)の旅行に対抗して、ホテルはゲストにモバイル端末を通じて究極のパーソナルなサービスを提供することで、ゲストが望む唯一無二の体験を実現するようになります。

ホテルの部屋の室温をタブレットで調整するトム

「ホテルのソフトウェアにゲストのソーシャルメディアプロファイルを入力することで、すべてがゲスト専用に準備された客室を予約できるようになります。

ゲストには、その人のニーズや好みにぴったりのアクティビティやレストラン、エンターテイメント情報などが提供されます。

2024年には、トムは客室に足を踏み入れた瞬間から、備え付けのさまざまなテクノロジーを利用することで、高度にパーソナル化されたホテル滞在を体験できるようになります。

この兆候はすでにペニンシュラ香港で見られます。このホテルでは、ゲストはタブレット端末を使用して照明、カーテン、室温、テレビを調整したり、ディナーの注文、スパの予約、日帰り旅行のプランニングができます。

ヒルトンブランドのコンラッドも同様に、コンラッドコンシェルジュアプリに新規テクノロジーを採用しています。このアプリを使って、ゲストは好みのバスアメニティーを選んだり、近くの公園でジョギング中に朝食を選ぶことが可能なため、ホテルでの滞在を極限までパーソナル化することができます。

ホテルのインターラクティブな壁ディスプレイを選ぶトム

未来学者のイアン・ピアソン氏は、近い将来にホテルの客室ではこうしたテクノロジーが新しいレベルに進化すると予想しています。ホテルの寝室には、眠りを補助する頭と首のマッサージや、モーニングコールを提供する電子機器を内蔵した枕が用意されるでしょう。そして、パーソナルトレーナー、映画の登場人物、さらには友人や家族までもが 3D 画像で投影されるホログラフシステムも提供されます。さらに将来的には、血糖値などをモニターできるセンサーを備え、その人に関連した食事のアドバイスを提供できるようになるとも予測しています。

ゲストの健康やリラックスのためのサービスは、ラスベガスのMGMグランドホテルにあるステイウェルルームにすでに取り入れられています。この客室には、ゲストの時差ボケした体内時計をリセットするために設計された室内照明や、ビタミンCを含むシャワー、高度な空気清浄フィルターを使用した空気清浄、オプションでアロマテラピーなどが備えられています。

しかし、デザイナーやホテル関係者は、よりインタラクティブで、ゲストの気分やニーズに合わせて変化する客室や周囲空間を作り出すようになっています。

スペインのセラーノ・ブラザース・デザインスタジオが描いた未来のホテルの客室は、インタラクティブな壁を備えています。その壁は映画や画像、家族写真や友人からのビデオメッセージを表示することができます。さらに不透明にすることできるため、非常に小さな部屋でもシャワーや着替えのためのプライベートな空間を作り出すことができます。

ニュー・サイエンティスト誌は、大規模な有機発光ダイオード(OLED)やNews Digital Systems (NDS) などのウェハー形式のテレビ画面やデジタルウォールは、壁全面が歌ったり踊ったりするインタラクティブなホテル客室の壁の先駆けだと評しています。

携帯電話のシンプルなアプリでコントロールできるこれらの画面は、側面照明が不要で、タイルのように敷き詰められた一面の壁の画面全体に画像を映し出すことが可能です。

クロマセラピー照明が設置されたバスルームでシャワーを浴びるトム

しかし、計画されているイノベーションはこれだけに留まりません。浴室もデザインが刷新されます。スマートメーターが水の使用量を節約するほか、シャワーに埋め込まれたモーションセンサーや電気を帯びた側面パネルが水温、水流、シャワーパターンを調節し、ビタミンCを注入します。浴槽にはクロマセラピーに基づいた照明が備えられ、筋肉の緊張を緩和する紫、消化を助ける黄色、刺激とエネルギーを与えるソフトな青などの色が使用されます。

すでに歯ブラシや洗濯機では一般的になっていますが、未来のシャワーはサウンドテクノロジーを使用して体の汚れを振動で落とします。さらに、赤や緑のライトで体がどの程度清潔になったかが示されるようになります。

ザ・ヒューチャ―・ラボラトリーの共同創立者であるマーティン・レイモンド氏は語ります。「まだ初期段階ではありますが、このテクノロジーは導入されています。科学者が直面している大きな課題は、高周波の音声が鼓膜に与える影響です。こうした音は鼓膜を破るおそれがあるため、現時点ではこの種のテクノロジーはホテルのベッドシーツを洗うために使用されると考えられています。

サイバーテクスチャーにより開発されたサイバーミラーシステムは、等身大の鏡をモーションジェスチャー(本体を傾けたり、裏返して操作する機能)搭載のタッチスクリーンに変換するため、ゲストは歯磨きする間に、クラウドに保管されているあらゆるものにアクセスできます。また、遠い将来には 3D プリンタがホテル客室に備えられ、歯磨き粉や石鹸などの浴室アメニティをプリントするようになるでしょう。

離陸準備完了の宇宙船

空と海へ

2024年までには、地球周回軌道への旅行に超富裕層の手が届くようになるため、宇宙はトムにとっての最後の秘境になることが予測されます。すでに実現している水中リゾートは主流な旅行先になるでしょう。

宇宙旅行

現在、企業は地球周回軌道を億万長者だけが行けるような場所ではなく、一般富裕層向けの旅行先にしようと競い合っています。実際に火星への商業飛行という夢を掲げ、さらに先を見据えているプロジェクトもあります。

未来学者のダニエル・ブル氏は次のように語ります。「10年後には宇宙旅行はより手頃な価格になっているでしょう。宇宙に行くだけでなく、エキサイティングで異質な空間を十分に堪能できるくらい長く滞在できるようになります。

大気圏内を旅行するためのハイテクなヘリウムガス風船

「一方で、数分間の無重力状態を味わえる低地球軌道への旅行は、非常に近い将来に比較的リーズナブルな価格になるでしょう」。

まず、勇気ある旅行者が地球の大気圏外へ旅するようになります。

ワールド・ビュー・エンタープライゼス社は2016年からハイテクな40万立方メートルのヘリウムガス風船に吊り下げた加圧キャビンに乗客を乗せ、地上30kmの上空に打ち上げることを計画しています。7万5千米ドルのチケットがあれば、これまで宇宙飛行士しか体験できなかった眺めを手に入れることができます。超高度から湾曲する地球の表面を見ることができるのです。

地球周回軌道への旅行は、チケットが入手困難なほど人気になるでしょう。企業はこぞって地球周回旅行をより手頃な価格で提案しようとしています。スペースエックス社は 2011 年に再利用可能なロケットテクノロジーに関する画期的な技術を発表しました。2014年5月にはその技術をさらに進めた最新バージョンの宇宙船を発表しており、最終的には火星にコロニーを造ろうとしています。

月にある未来型建築

欧州宇宙機関およびフォスター+ パートナーズ社は月でのコロニー建設計画を発表しています。拡張可能な構造物を地球から移送し、3Dプリンタで作成した外郭で覆う、と研究者は述べています。

スカイスキャナーのガレス・ウィリアムズceoは「宇宙旅行が成長し、手頃な価格になることは疑いようもありません。ただ、一般的な人々にとって何が手頃かは、地球の人口が70億人であることを考えると、非常に定義しにくい問題です」と述べています。

「宇宙旅行が大多数にとって手が届くほど一般的で安価になるよりも、火星での居住やマーズ・ワン (オランダの民間非営利団体)やイーロン・マスク(スペースエックス社CEO)のビジョンの方が先に実現するのではないかと思っています」。

宇宙旅行に興味はあるけれど、天文学的な価格で行けないという方にはバルセロナ島のモビロナ・スペース・ホテルをお勧めします。

このホテルは地球上にあるにも関わらず、重力スパ、宇宙グライダー、宇宙観測所を備えており、キャビンの窓からの銀河そっくりの眺めや、垂直風洞トンネルでの無重力体験によって、ゲストは宇宙旅行を「経験」することができます。

地球を飛行する低軌道宇宙船

しかし、スカイスキャナーのフィリップ・フィリポブは「宇宙船で低軌道を飛行することで大陸間の飛行時間を劇的に短縮できる可能性があり、こちらの方が宇宙に行って休暇を過ごすよりも画期的です」と指摘しています。

「ヴァージン・ギャラクティック社や スペース・エックス社がその目標を実現すれば宇宙旅行が可能となりますが、それは人類にとって大きな進歩です」とフィリポブは言います。

「しかし、それよりもさらにエキサイティングなのは、宇宙探索から商用飛行機への技術移転です。ヴァージン・ギャラティック社の宇宙船は地球の軌道を2.5時間で1周することが可能です。この大気圏移動テクノロジーを商用飛行機に安全に応用できれば、一般の旅行者はロンドンからシドニーへのフライトを2.5時間に短縮できるかもしれません。これにより、かつてないほど旅行が簡単で迅速になり、時間の壁を超越することになるでしょう」。

海底ホテルの部屋の椅子に座るトム

水中探検

海底旅行はトムにぴったりのもう一つの選択肢で、宇宙旅行よりも良心的な価格です。

海底ホテルは、ニッチで新規性のある旅行先としてすでに存在しています。ドバイのパームアイランドにあるアトランティス・ホテルのネプチューンおよびポセイドンスイートは、色とりどりの魚の群れが泳ぐ海中をパノラマガラスの壁越しに眺めることができるロマンチックな隠れ家です。フロリダのジュールズ・海底ロッジは、既存の潜水艦技術と素材を使って建てられ、1986 年以来、水深約 10メートルでの生活体験を提供しています。

ドバイにあるウォーター・ディスカス・ホテル

現在、旅行業界のイノベーターたちは構想を拡大し、シングルルームやスイートだけでなくホテル全体を水面下に建築しようとしています。2024年までには水中での休暇が主流になっているでしょう。

ドバイのウォーター・ディスカス・ホテルはこの新種のホテルの先駆けです。

2015年にオープン予定のこのホテルには、水族館のような窓を備えた21のスイートルームが水深 9 メートルの海底に建築される予定で、ゲストはダイビング器材を身につけて外出することができます。スパ、庭園、プールもあるこのホテルは水中で回転可能で、緊急時にはわずか15分間で水面に上昇することができます。

スカイスキャナーのガレス・ウィリアムCEOは、水中旅行は2020年代には宇宙旅行をしのぐと予想しています。「大規模な水中ツーリズムは、大規模な宇宙ツーリズムよりも早いペースで発展すると予想しています。宇宙よりも海中のほうが見るべきものが多いので、より楽しめるのではないでしょうか」と語ります。

宿泊先の外にいるトム

パーソナルな現地体験を求めて

2024 年には、ピアツーピア (P2P) の旅行や第二の自宅のようなホテルが、現地の人々の目線で旅先を探検するというニーズを満たすようになるでしょう。

エアビーアンドビー社などから始まった自宅を交換するという協力型の旅行は、2008年の世界的な経済危機が発生した際に、消費者が豪華さよりも真の現地体験を求め始めたことにより生まれました。

フォーブス社によると、2013年までに米国内の協力型経済で家計に入ってきた直接収入 (パーキング・パンダ、スナップ・グッズ、オン・リキッドなどの共有サービスを含む) は35億米ドルに上ると推計されています。

サパークラブイベントに参加するトム

宿泊先だけに限らず、食事のイベントにも参加することで、旅行者は現地の人のような暮らしを体験できます。

“サパークラブ”(現地の食通が自宅に有料で人々を招き夕食を楽しむこと)も爆発的に増えています。ヨーロッパや米国の自宅でクラブを運営している人々向けのウェブサイトである ファインド・ア・サパークラブ は、7,000人もの会員を抱えています。

今後 10 年間でこのような協力型の行動へと消費者がシフトすることによって、世界の旅行産業に非常に大きな影響が及ぶでしょう。「将来、協力型の旅行はホテルの客室予約数を著しく減少させることになると思います」と、『The Experience Economy: Work is Theatre and Every Business a Stage』の共同執筆者であり、ストラテジック・ホライズン社の共同創業者であるB ジョセフ・パイン 氏は語ります。

「5~10%の人々が自宅を旅行者に貸し出すと見られます。これは非常に大きな数字です。手頃で本当の意味での先進国の旅行体験を求める人々にとって、これ以上のものはないと思います」

世界地図を表示するタブレット

未来学者の ダニエル・ブルス氏は、ソーシャルメディアが旅行業界に与えた影響と、個人のニーズや必要性に合わせた旅行への欲求を強調しています。「ソーシャルトラベルは5年以内に旅行業界の定番となることでしょう。ソーシャルメディアツールは、旅行者と現地の人々との協力を手助けするために利用されることになります」と同氏は述べています。

未来学者の スカイスキャナーのフィリップ・フィリポブは、このトレンドが2020年代まで拡大し続けると予測しています。

「クラウドソーシング型の旅行やサービスが成功を収めているのは、我々が友人や家族を信頼しているからです。クラウドの声には信頼性があります」と、フィリップは語ります。

「このようにして我々は決定を下し、新しい旅行の可能性を切り開いているというのは、驚くべきことです」。

サイの写真を撮るトム

最初と最後の旅行者:

禁止区域と絶滅危惧種の生物を観察する旅行

ソーシャルメディアの成長は留まるところを知りません。2024年においても旅行の主なモチベーションはソーシャルメディアで自慢することでしょう。

現代の多くの旅行者と同様に、トムは旅先での珍しい体験を記録し、友人や家族から羨望を集めることに熱心ですが、それには2つの全く異なる方法が登場すると予測されています。

まず、紛争または政治問題のため、以前は訪れることができなかった国や地域などの禁止区域を旅行することで、最初に足を踏み入れた1人であることを自慢できます。また、絶滅の危機にある生物や種を観察しに行くことで、それを目撃した最後の 1 人という栄誉を得ることができます。

また、いかに希少で絶滅に瀕しているかを国際社会に伝え、人々に関心を持ってもらうために、環境保護者達はこれまで立ち入り禁止だった領域を、高額な費用を払えて影響力のある旅行者に開放することを検討しています。このような旅行者は、自身の経済力とソーシャルメディアにおける発言力を駆使して、人々に何が起こっているかを警告できるのです。

スカイスキャナーの フィリップ・フィリポブは、2020 年代には禁止区域への旅行が多くの人々を惹きつけると予測しています。「先進国や新興国のいずれの旅行者も、新しいスリルを求めることになるでしょう。つまり、アフリカ、アジア、ラテンアメリカなど、友人たちが誰も訪れていない国々を探検する機会を探すようになります」と、フィリップは話します。

中国人の旅行熱の高まりは、人里離れた禁止区域を探検したいという欲求を後押しするでしょう。「2020 年代には、パリ、ローマ、ニューヨークなどの伝統的な旅行先に、大勢の中国人旅行者が押し寄せるでしょう」と、ダニエル・ブルス氏は語ります。

「このような伝統的な場所は非常に混み合っているため、多くの人々はそれらを避け、e-エージェントデバイスを利用して、大衆向けの市場がまだ気づいていない隠された旅先を探し出すようになります」。

旅行未来学のイアン・イェオマン博士も同意見です。「2020年代には、アフガニスタン、北朝鮮、イランなどの国が多くの人々を惹きつけるでしょう。なぜなら、旅行者は友人達が行ったことがない場所に一番乗りしたいからです」と同博士は述べています。

「アフリカでは、ボツワナがおすすめです。経済的に成功していて、南アフリカよりも安全で、素晴らしい国立公園があります。アンゴラにも中国からの多くの投資が流れていて、経済的に成功できるでしょう」。

「レバノンも、政治状況が改善し続ければ、第二のドバイになるでしょう。また、ブータンもラグジュアリーな旅行における世界の主要な観光地に仲間入りすると思います」。

動物

2024 年には、立ち入り禁止地帯に最初に足を踏み入れた人が“勇気ある旅行者”として社会的な名声を得るようになるでしょう。さらに、野生のサイやトラ、オランウータンを最後に目撃した人やグローバルカルチャーに同化してしまう前の部族を最後に訪問した人も、社会的な名声を得るようになります。

レイノルド・ハーベイ・レメリン氏(『Last Chance Tourism: Adapting Tourism Opportunities in a Changing World』の共同筆者)は次のように語っています。「昔は、“最初に体験した人になる”ために多くの人々がエキゾチックな旅行先に訪れていました。しかし、急速に変化する世界においては、“最後”の人になることが新しい旅行現象になります」。

特に先進国の旅行者が、まもなく野生から姿を消すであろう生物種を見るために殺到することから、こうした旅行トレンドは“絶滅を目撃するための競争”になる恐れがあります。

「現代の多くの旅行者は、地球温暖化がより深刻になる前に、ホッキョクグマを見ておかなければ、と感じています」と、専門旅行会社である ナチュラル・ハビタット・アドベンチャーズ社ゼネラルマネージャーの リック・グートケ氏は述べています。氷山が急速に溶けているため、ホッキョクグマが従来のアザラシ狩りの地にたどり着けなくなる前に一目見ようと、何万人もの旅行者がカナダ北部に詰めかけているのです。

動物

科学者が10年以内に絶滅すると考えているその他の絶滅危惧種には、オサガメ(インド洋)、タマリン猿(ブラジルのマナウス)、黒サイ(西アフリカ)、中国ワニ(揚子江)、オオコウモリ(セーシェル)、ダマガゼル(チャド)、フタコブラクダ(ゴビ砂漠)、キタケバナウォンバット(オーストラリア)、スペインオオヤマネコ(スペイン)、およびスマトラオランウータン(ボルネオ島とスマトラ島)などがあります。

しかし、デイリー・テレグラフ紙によると、ほとんどの自然保護活動家は、絶滅危惧種を救うための戦いに勝利するには観光産業からの収入が大きな役割を果たすことになると見ています。

観光産業を放棄することは、自然保護を放棄することになるのです」と、ケニアの野生動物専門家であるジョナサン・スコットは語ります。「『何かできることがありますか』と聞かれれば、我々は『サファリをすることが助けになります』と答えます。野生動物を利用した観光産業は必要性に迫られて生じたのです。このようなサファリによって動物保護区を維持し、野生動物を保護するための費用を得ることができます。旅行者が落とすお金がなければ、生き残っている野生動物は密猟者に渡すしかなくなります」。

このような視点はトムが将来のエコツーリズムの取り組みを訪れるよう働きかけます。トムは、絶滅の危機にある種への支援を示すと同時に、生物種やその生息地がまだ存在しているうちに見ておきたいという彼自身の欲求も満たすことができます。

「エゴツーリズムはエコツーリズムの一形態です。昔は、最初の訪問者になろうと新しい土地を追い求めたものですが、現在は消滅しそうな場所を今のうちに一目見たいと思って訪れるのです」と、『NatuRe criMe how WE’re getting Conservation WRong』の著者である ロザリーン・ダフィー氏は語っています。

まとめ

2024年までには、トムが宿泊するホテルがテクノロジーの進化によってすっかり様変わりするだけでなく、ホテルがある旅行先の様相も変わり、全く新しいリゾートや地域セクターが出現します。

パーソナル化されたホテルのスイートルームには、ビデオ画面や通信ハブとして動作し、不透明なプライバシーを守るための目隠しにもなるタッチ式のインタラクティブな壁を備えるようになるでしょう。ビタミンCのシャワー、網膜認証によるドアの開閉、眠りを誘うためにマッサージ機器を内蔵した枕、ホログラフのパーソナルトレーナーなどがパッケージとなって提供されると見られています。

今後10年間の注目の旅行としては、地球周回軌道への旅行や滞在、水中ホテルでの休暇、そして以前問題があったアジア、アフリカ、中東の国々を観光する最初の人になるための旅行、あるいは気候変動や人類の侵食により絶滅の危機にある生物種やその生息地を目撃した最後の人になるための旅行などが挙げられます。

また、2020年代中頃までにさらに多くの協力型アクティビティが生まれ、現地の人々や風土と密接かつ個人的に関わるようになるでしょう。何百万人もの人々が自宅を旅行者に貸し出し、ホテルやリゾートはアットホームな雰囲気やエッセンスを取り入れて、第二の家のようになると予測されます。

総括
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2020年代の旅行を取り巻く環境

2020年代の旅行を理解するためには、今後10年間にわたり海外旅行業界を新たなものに変えるテクノロジー、経済、社会が及ぼす影響を考慮する必要があります。

おそらく現在進行しているものの中で最も広範囲に及ぶ影響は、デジタル化の成熟期に向けての成長です。2014年には、サイバースペースやそれに関連するテクノロジーはもはや目新しくも斬新でもなくなっています。これらはすでに私達の生活の一部として当たり前のものとなっています。

中国ネットワークインフォメーションセンターによれば、中国では現在4億6,400万人、すなわち総人口の34.5%がスマートフォンやワイヤレス携帯デバイス経由でインターネットにアクセスしています。 ブルッキングス研究所によれば、アジアでは中産階級が増大しており、2020年までにその数は3倍の17億人になると予測されています。そして、デジタルテクノロジーへの世界的な動きや取り組みは、中産階級の消費力によって駆り立てられるでしょう。

2024年までに、インターネットの接続性とそれを可能にする携帯デバイスは、現代の照明や集中暖房システムと同じくらい当たり前になるでしょう。 先進国と発展途上国の両方において、テクノロジーはシームレスに旅行者の日常世界へと取り込まれていくでしょう。シスコシステムズによれば、2020年までに500億のデバイスがインターネットに接続されると見られています。

同時にアジア、南米、アフリカの発展を遂げる市場、すなわち各地域の新たな新興経済国の国民の消費力が高まるにつれて、これらの地域からの旅行者が激増するでしょう。

Boston Consulting Groupによれば、世界で最も大きく、急成長を遂げている地域経済であるアジアのGDPは2030年までに2倍の67兆米ドルになり、ヨーロッパと南北アメリカのGDPの予測額を合わせた額を上回るとされています。

発展を遂げる市場からの何百万人にも及ぶ旅行者はグローバル・モビリティ(海外への移動)の時代の到来を告げています。これに伴い、海外旅行業界、そして旅行の機会や旅行体験の需要は、今後10年間で急速に拡大していきます。

世界旅行ツーリズム協議会(World Travel & Tourism Council)は、2013年に海外旅行者数は3.2%増加すると予測しています。この数値は、いとも簡単に世界の予想GDP成長率2.4%を上回るものです。このギャップは、2012年の新興経済国でより顕著に見られます。事実、2012年の年間旅行者数は、中国と南アフリカで7%増加、インドネシアでは6%増加が報告されています。

経済破綻後の負債や緊縮経済により過去5年間経済成長が後退しているヨーロッパやアメリカといった切り詰めが必要な市場では、依然として経済混乱が続いています。経済混乱は、こういった切り詰めが必要な市場の旅行者の旅行に対する姿勢を形成するため、発展を遂げる市場の旅行に対する消費は、継続する経済混乱への世界的な対応策として必要不可欠になるでしょう。

IPK Internationalの報告書「Global Travel Trends」(世界の旅行トレンド)2012年/2013年版では次のように報告されています。「経済混乱が続見られる国はますます増えてきているが、これらの国々は国の負債を支払うことができない。債務危機は終わっておらず、西ヨーロッパ、アメリカ、日本の旅行動向へのマイナスの影響(いわゆる「下降移動」)を排除することはできない」

2020年代の海外旅行業界の定義に役立つ最後の影響は、社会に関するものです。前例のない速さで世界の高齢化が進む中、人口統計学上の時限爆弾は爆発の時を待ち構えています。

国連によれば、1950年~1955年には47歳であった全世界の平均寿命が2005年~2010年には69歳まで上がっており、20世紀は人類史上最も急激な死亡率の低下が記録されています。

また、1950年、15歳未満の子供の数は、60歳以上の成人の2倍でしたが、2050年までに、60歳以上の成人の数は、子供の数の2倍になるとされています。

このため、2024年は、発展を遂げる市場の新たな体験への需要が高まることが予測され、一方で経済立て直しを行うヨーロッパやアメリカといった切り詰めが必要な市場では財政面での警戒が見られるでしょう。未来の旅行者はこの2つの市場が共存し、うまくバランスをとっている世界を旅行することになるでしょう。

また、未来の旅行者にとって、旅行先の決定、予約から、トランジットやフライトまで旅行のあらゆる側面が一貫して無意識に最新のデジタルテクノロジーに組み込まれることは、当たり前のこととなるでしょう。




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調査方法

スカイスキャナーの本報告書は、世界の主要都市の編集者、調査員、未来のネットワークに関する知識に精通している専門家56名で構成されたチームによって、今後10年間に開発されることが見込まれる画期的なテクノロジーと2020年代の海外旅行業界を形作るワクワクするような新たな旅行先の詳細なイメージを描くためにまとめられたものです。

専門家の方々のご協力

報告書作成にあたり、『Technotrends: How to Use Technology to Go Beyond Your Competition』の著者である未来学者のダニエル・ブルス氏や旅行に関する未来学者であるイアン・ヨーメン博士をはじめ世界的に有名なあらゆるジャンルの専門家の方々の専門的知識を取り入れ、今後開発されるであろう旅行に関するテクノロジーや今後の旅行動向を調査しました。

また、デジタル戦略家ダルジット・シーン氏、マイクロソフトUKの構想部門主任デイブ・コップリン氏、グーグル・クリエイティブラボのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターのスティーブン・ブランナカス氏、レディング大学人工頭脳学部のケビン・ワーウィック教授、Future Laboratoryの共同設立者であり『CreATE』、『The Tomorrow People』『The Trend Forecaster’s Handbook』の著者であるマーティン・レイモンド氏よりご提供いただいた背景事情に関する講義の内容も活用いたしました。

スカイスキャナーからは、マーガレット・ライス-ジョーンズ氏(会長)、ガレス・ウィリアムズ氏(CEO兼共同創設者)、アリステア・ハン氏(最高技術責任者)、フィリップ・フィリポーヴ氏(企業間取引担当部長)、ニック・グプタ氏(ホテル担当部長)、ダグ・キャンベル氏(製品マーケティング部長)に独自の見解や専門知識をお話しいただき、必要に応じて報告書内で直接引用させていただきました。

上記の情報と平行して、Future Laboratoryのオンライン・ネットワーク「LS:N Global」と同社の旅行、テクノロジー、レストラン、ホスピタリティに関する年次報告書に記載されている研究結果を使用して調査内容を補いました。




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芸術作品


2024年の旅行 - セクション2 PDF (2.5Mb)







2024年の旅行 - セクション3 PDF (2.5Mb)







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